母情

平野醸造を訪ねて

母情

 「酒造りは、技術もお米も大事だけど、あなたたちの毎日の生活と同じでね、おいしいご飯が一番でしょ。お酒もお米を蒸すのが一番大事。」年期の入った、昔ながらの蒸し器の前で僕らにニコニコと説明してくださる蔵本。「生活」という身近なたとえで、造りを話す。

長刀清水

 ここ奥美濃の郡上市大和は、清流・長良川の上流域にある。郡上に2つの地酒「母情」と「元文」。その母情を造っているのが平野醸造だ。大和にある明建の山の麓からとる「長刀(なぎなた)清水」として有名な清泉をパイプで引用し、水量・水質ともに豊かなその水で酒を造る。

平野醸造の蔵

 「とろ火でやったオカズと強火でやったオカズとでは、とろ火の方がおいしいですよ。お酒もそれと同じなんです。」醸造タンクの中で、母情は約25日間かけて育つという。そのとき、タンクの温度は15度より上げないそうだ。真冬の雪積もる蔵で造られた酒は、1月初旬に新酒として発売される。

酒蔵秘伝もろみみそ

 私の感じ方だけれど、母情は、人情溢れる蔵本の人柄を感じさせるあったかい酒だ。ひとりでしみじみと呑むよりも、郡上踊りやお盆のみんなと集う場所で、わいわい呑みたい。そんな田舎くささが魅力だろう。
 また、平野醸造には母情と並ぶ名品がある。「古今伝授の粕漬」「酒蔵秘伝もろみみそ」は、母情をしぼった後に残る酒粕を使った加工食品。残り物を利用したというと、聞こえは悪いかもしれない。しかし、そもそも酒の原料は、特別に栽培した米を削り、一番いい部分だけ使う贅沢なものだ。それを職人の技と知恵を駆使して醸したもの。ここの酒粕には雑味がなく、どこまでも豊かな深い味わいがある。見た目はちょっと悪いが、味は「究極のつまみ」と言える。是非ぜひ一度、おためしあれ。

元文

原酒造を訪ねて

元文

 1740年・元文五年創業。
 その当時のままの蔵。蔵の裏に広がる田んぼでつくったアキタコマチを、東京農大の「花酵母」で造る「元文」。ここは、郡上市白鳥にある布屋 原酒造場。東京農大出身の12代目当主が蔵を案内してくださった。体育館くらいの母屋も蔵も、きれいに掃除されてクモの巣ひとつない。微かにいい香りが漂っていた。

麹室

 原酒造は、全ての造りに花酵母をつかっている。花酵母とは、文字通り花から採った酵母だ。桜、ナデシコ、菊、シャクナゲなど、美しい花々から酵母を採り、それを使った酒には、瓶にそれぞれの花の名が明記されている。
 「パンを発酵させるだけの酵母は、すぐできるんですね。お酒を造ることができる酵母は難しい。でも、花の蜜につく酵母はお酒をつくるのに適しているんですね。」静かで、おだやかな口調で理路整然と、当主は話す。自身も在学時に花酵母の前身となる研究に携わったそうだ。「この地球上の微生物の中で、人が知っているのは1%にも満たないんですね。遺伝操作なんかしなくても、ひょっとしたらこの地球上に…… 話が脱線しましたね。」と笑った当主に、酵母に対する深い理解と愛情を感じる。

船

 元文は、「酒槽(さかぶね)」という約、縦3m・幅1m・深さ2mほどの長方形をした巨大な桶でもろみを絞ってできる。大正3年から使われているという大変貴重なもの。今でも槽を使う酒蔵はわずか。2月から3月までに絞られた元文は3月末に新酒が発売される。酒造りをやっていて、よかったと思えるときは?と当主に訪ねると、「新酒をお客さんが呑んで、おいしいと言ってくださったときは、嬉しいというか、ほっとします。」静かな笑顔で答えてくださった。

試飲

 私の感じ方だけれど、元文は飽きない。どの酒にも共通した、芯のしっかりした味。そして、5種の酵母それぞれによる、香りの違いがはっきりとでる。好きな花の名で酒を選んで、呑み比べするなんて、素敵過ぎやしないか。

photo+text:萱場 振一郎

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郡上の地酒、酒のいとう店長ブログ


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